3Dプリンターで金型製造?ドイツの製造メーカーが試作品コストの97%をカット

3Dプリンターの導入が進む製造業

欧米系の製造業が製造工程の一部に3Dプリンターを取り入れて、試作品の製造に使用したりと、交換パーツを製造したりと、急速に3Dプリンターを導入し始めています。

3Dプリンターはものづくりの現場において、大量生産が必要ではないが必要なパーツ類や、製品開発の過程で試作品を製造するため使われていますが、大々的に導入している事例は大企業の導入事例がほとんどで、中小企業の導入事例はあまり見えてこないのが現状です。本日はドイツのものづくり中小企業Robert Seuffer GmbH & Coの事例をご紹介。

プリンターで金型自体を製造

Robert Seuffer GmbH & Coは中小企業といっても従業員が約530名で売り上げは1億ユーロを超えるドイツのメーカーだ。

主な事業内容は家庭用電化製品や商用車、乗用車の部品製造を行っているサプライヤーで、1766年に創業されたという歴史をもつ企業だ。主な製品は自動車用部品の送風レギュレーターやブロアモーターなど、商用車用の12種にも及ぶ部品、家庭用電化製品においても様々なパーツ類を製造している。そのプラスチック部品の製造量は年間で1200万個から1500万個の規模に及んでいる。

※従来の金型と3Dプリンターで作製した金型

3Dプリンターでプラスチック部品を成形する射出成型金型を製造

今回導入した3Dプリンターは、射出成型で製造されるサンプル品の製造のために導入を行ったとのことだ。射出成型法はプラスチックなどの最も一般的な加工法で、軟化する温度まで加熱されたプラスチックを、射出圧を加えて金型に押し込んで成形する方法だ。大量生産を開始する前に試作品を射出成型法によって製造し、設計通りフィットするかどうかや品質を評価する用途で使用をおこなっていた。

この試作品を製造するための射出成型用金型自体を製造するために3Dプリンターを導入したという。

金型製造の97%のコストカットを実現

通常は射出成型用金型自体を製造するのに8週間近い時間と4万ユーロの費用がかかっていた。しかし今回3Dプリンターで射出成型用金型を製造したら、設計に2-3日、出力に1日の日数がかかり、費用は1,000ユーロほどであったという。これは費用で言うと約97%のコスト削減になり、日数でも50日以上の短縮につながっている。

また、3Dプリンターの利用は射出成型用金型の製造だけではなく、電子基板上に低融点ポリアミドを塗布するためのホットメルト用の金型も3Dプリンターで製造するとのことだ。

導入が進むストラタシス製の3Dプリンター

ちなみに導入された3Dプリンターはストラタシス社製のもので、ストラタシスのゼネラルマネージャーアンディ・ミルトン氏が語っているところによると

「企業は新製品を導入する際に、その製造工程に多大な効率化を導入しようとする。その場合、3Dプリントとして知られているレーザー積層造形技術に多くの利点を見出すだろう。また、3Dプリンターは量産前のテスト製造のコスト削減による費用対効果だけではなく、カスタマイズされたパーツを生産するために役に立つ。ますます多くのメーカーが無料の射出成型製造ソリューションとして3Dプリンターを使用するようになっている」とコメントしている。

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まとめ

今までの3Dプリンターの最も一般的な使用方法は試作品の製造にある。特に大量生産を開始する前の製品の試作品として3Dプリンターで造形したもので確認するという使用方法が一般的であった。

非常にざっくりと従来の製品開発の流れをいうと、

①製品企画、②デザイン、③3Dモデリング、④3Dプリンターで試作品を造形、⑤確認や修正作業、⑥金型製造、⑦量産化、

という流れである。

こうした今までのものづくりの流れの中における3Dプリンターの占める位置というのは、あくまでも試作品の製造にとどまり、製品企画やデザイナーによって設計されたモノを仮に具現化するに過ぎないものであった。試作品造形に使用される素材も石膏での使用が一般的であり、とてものこと造形されたものを使用することなどできないものであった。

しかし、3Dプリント技術が発達し、試作品の域を超える精工な造形加工、石膏にとどまらないプラスチックや金属などの素材の多角化は明らかにものづくりの場において製造プロセスを置き換え始めている。

今回のドイツのRobert Seuffer GmbH & Co社の事例が活気的なのは、試作品を製造するために3Dプリンターを使用するのではなく、試作品を製造するための金型自体を製造するのに3Dプリンターを使用した点にある。すべてとは言い切れないが、少なくとも従来の射出成型金型を製造する金型製造の工程にコストと時間という二つの大きな革新を起こしていることは間違いない。

今後3Dプリント技術がさらに加速し、3Dプリンター自体の価格もより低価格なものになり、製造業の現場に導入が進むことで従来の製造業とは何が異なるのであろうか?

まだ、3Dプリンターの活用は開始されたばかりであり、今後の進展によって製造業に対する影響は顕著に出ていくのだろうが、大幅なコスト削減と時間の短縮が生み出すものは果たして効率化だけなのであろうか。大量生産とカスタマイズ化のすみわけが進むモノづくりの現場において、今後どういう変化が起きていくのか注視する必要がある。

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