3DHubsとUPSの3Dプリント時代に対応した新たなサプライチェーンの形

忍び寄るサプライチェーンの崩壊

3Dプリンターの最大の影響はサプライチェーンを変革してしまうことだ。サプライチェーンとは「原料の段階から製品やサービスが消費者の手に届くまでの全プロセスの繋がり」のことを指す。

たびたびその影響するところを物流業界や小売業などに焦点を当てご紹介してきたが、そんな3Dプリンターのサプライチェーンへの影響を如実にあらわす取組が開始されている。

3DHubsは全世界80ヵ国の3Dプリンターを保有する個人、小規模事業者が登録する3Dプリントサービスネットワークだ。 既に登録する個人や小企業は6,200社にも及び、3DプリントサービスのCtoCサービス企業としての地位を確立してきている。そんな3DHubsは今新たな新サービスを開始し始めている。

大手国際物流サービスUPSと連携することで開始されたこのサービスは、将来のサプライチェーンの在り方を示すようなビジネスモデルだ。

全世界80ヵ国6000以上の3Dプリントサービスが登録

皆さんはFairPhoneというスマートフォンはご存じだろうか。今ヨーロッパで大人気のこのスマートフォンはフェアトレードの精神で作られた消費者向けスマートフォンだ。再利用可能であり、材料の入手方法から製造プロセスまですべてが見える化されているスマホ。

価格は325ユーロと高いが、ドイツをはじめ、欧州で人気で既に発売から数万台以上販売されている。今回3DHubsが開始した新たなビジネスモデルはこの、FairPhone専用のスマートフォンケースを3DHubsに登録している6000以上の3Dプリントサービスで製造するというもの。

実は3DHubsは全世界どの地域においても10億人の人々に対して3Dプリントサービスを提供できるほどまで成長している。またそのほとんどの国では、10マイルから25マイル程度の距離以内に必ず3Dプリントサービスが存在することになる。

そのため、FairPhoneのスマートフォンケースを購入した人は世界中どこにいようとも、一律18ユーロの価格で購入することができるというわけだ。手順としてはFairPhoneのサイト上で購入し、自分の住んでいる地域に最も近い3Dプリントサービスで製造され、UPSで配達されるという仕組みになる。

FairPhoneの3Dプリントサービス動画

3D Hubsの創業者Bram de Zwart氏

FairPhoneの3DHubsとのスマホケース販売サイト

世界中どこからモノを買っても物流費は変わらない

この3DHubsとFairPhoneの取組を見てみると、まさにサプライチェーンの変革を感じられずにはいられない。例えば従来のe-bayなどのグローバルなネット通販を日本から利用した場合、ヨーロッパからモノを購入すれば、モノの大きさや重量に比例して物流費がかかる。

遠ければ遠いほど、モノの大きさが大きければ大きいほど物流コストがかかるのは常識だ。 そのため、場合によっては商品そのものよりも物流コストの方が高くなる可能性だってある。

しかし、3DHubsに登録している全世界の3Dプリントサービスを利用することができれば、世界中どこに住んでいようとも物流コストは一定になるだろう。 例えば日本に住んでいながらオランダのFairPhoneのサイト上でスマートフォンケースを購入したとしても、製造されるのは自宅の近所の3Dプリントサービスだ。

既に従来からのサプライチェーンの崩壊は一部では始まっているとみていい。こうした物流業界への地殻変動に対応する形で、UPSも新たな役割として3DHubsとの連携を強めている。

とりわけ物流業界はアメリカの郵政公社、フランス郵政公社、UPS、キンコーズと、軒並み3Dプリントサービスを開始し、いち早くサプライチェーンの変革に対応する動きを撮り始めている。

ローカル3Dプリントサービスで製造するため物流費は安く抑えられる

まとめ

3DHubsに登録されている3Dプリンターはそのほとんどが、MakerbotのReplicator や、オープンソースのUltimakerだ。どちらも低価格タイプの3Dプリンターで、性能はそこまでいいわけではない。 また使える素材も一般的なプラスチックフィラメントになるため、作れるものも限界があるだろう。

そのため、見方によれば3DHubsのサービスは製造というにはお粗末かもしれない。 しかし、こうしたお粗末な点は、3Dプリンターの性能向上や低価格化によって早晩問題にもならなくなる。

ここ1年で低価格帯の3Dプリンターの性能は飛躍的に向上しているし、5万円、10万円程度でも従来のものに比べれば高性能な機種が登場してきている状況だ。

全世界にはりめぐらされた3Dプリントサービスのネットワークがより高性能な機種を備え、使える素材も多角化され始めた時、今のサプライチェーンの崩壊が本格的に始まるのかもしれない。

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