3DsystemsとGoogleが3Dプリンターによる本格的な高速大量生産を計画

量産設備としての3Dプリンター

2014年度に入り3Dプリンターが新たな局面を迎えようとしている。

過去20年にわたり試作品やモックアップの製造のために用いられてきた3Dプリンターだが、造形精度の向上と、素材の多角化という二つの局面が発展をすることにより、データからのダイレクト製造に用いられることが注目されつつある。

データから最終品が直接作れるというメリットは、コスト削減やデザインの広がりなど、様々なメリットをもたらすことが期待されるが、いまだ、真の3Dプリンターの役割が見出されているわけではない。

しかし、ここにきて、新たなフェーズに入ろうとしている。それは3Dプリンターを量産用の設備として用いようという取り組みである。 現在の3Dプリンターはその造形スピードが非常に遅く、造形物にもよるが、だいたい1㎝の高さを生成するのに1時間かかるとされている。

既に、多くの企業やデザイン事務所などで使用されている3Dプリンターは大体この程度の性能だと言える。 そのため多くの人が、量産という発想には結びつかないだろう。むしろ1個1個のオンデマンド製造のための機器に過ぎないと思われているのではないだろうか。

しかし、もし3Dプリンターの速度が今よりも格段によいクオリティで、何十倍、何百倍のスピードで作ることができれば、量産機器として使用することができるのではないだろうか。

そんな新たな3Dプリンターの可能性に取り組むのが3Dsystemsだ。

3Dsystemsは言うまでもなく3Dプリンターメーカーとして世界一のシェアを誇るこの業界のトップチャンピオンと言える。これまで数々の3Dプリンターを開発してきたが、最近では単なる3Dプリンターメーカーとしての枠を飛び越えつつある。

本日は3Dプリンターを量産設備として利用する新たな取り組みについてご紹介。

Googleとの提携による超高速3Dプリンターの開発

3Dsystemsは昨年度から事業拡大を図るために数多くの企業買収と業務提携を行っているが、中でも最近注目されているのがGoogleとのスマートフォンカスタマイズ生産を行う事業Project Araだ。

本サイトでもたびたびProject Araについてご紹介させていただいているが、簡単にご説明すると、スマートフォンをユーザーがオンライン上で自由にカスタマイズして購入できるという仕組み。

生産にあたっては3Dプリンターが使用される。Project Araでは、3Dプリンターで生産されるパーツは、スマートフォンを構成する全てのパーツを示しており、単純に外側のケースだけではなく、内部のプリント基板や電子モジュール等の半導体なども含まれる。

Project Araの詳しい記事はこちらをどうぞ

3DsystemsとGoogleが取り組むこの計画は、3Dプリンターによる単なる小ロットの生産を目指しているわけではなく、世界中の多くの人々に利用してもらう考え。

2015年の本格始動をめざし、新たな超高速3Dプリンターの開発に乗り出している状況だ。

超高速3Dプリンターの開発は今各国が一斉に取り組んでいる課題だが、Googleと3Dsystemsが手掛ける3Dプリンターが驚きなのが、単なる造形スピードを向上させたものではなく、明らかに量産を目指す生産設備ということが今回の3Dsystemsの発表により明確になった。

3Dプリンターとコンベアベルト技術の融合で高速カスタマイズ生産

今回3Dsystemsは、開発する新たな3Dプリント技術について下記のように言及している。

「今回私たちが開発するものは、私たちのほとんどの製品に採用されている‘往復のプラットフォーム`を削除するものです」。 ここでいう‘往復のプラットフォーム`とは、一般的なFDM方式の3Dプリンターのノズルの動きを指す。

現在の多くのFDM 3Dプリンターは造形物によってプリントする方向を変更しながら作り上げていくため、スピードが大幅に低下するという指摘だ。

しかし今回新たに開発する3Dプリンターはプリントする方向をいちいち変更することなく、一つのノズルは一つの方向でしかプリントさせないという方式とのこと。

いうなれば、ベルトコンベア上に、何本ものFDMノズルを設置することで3Dプリントを完全に流れ作業で行うという方法だ。 現在3Dsystemsはこの新たな体制を開発中だが、この3Dプリントの量産設備に「レーストラック·アーキテクチャ」という名前を命名しているという。

もしこれが完成した暁には、この3Dプリンターで何百万、何十億のパーツを量産することができる凄まじい速度を持つ3Dプリンターになる。

まとめ ‐高速カスタマイズ量産で競争力が飛躍的に向上- 

3Dプリンターの特長は1個1個のカスタマイズ性だと言われている。しかし、現在の性能では1個1個作るのに長時間かかってしまうため、そこが金型を使った量産と使い分けられている。

しかし、3DsystemsとGoogleが取り組む新たな3Dプリンターの開発は、金型の量産性と3Dプリンターのカスタマイズ性を結びつけるものだ。今の技術では相反する二つの特性を一つにすることで、一人ひとりの細かい要望に応えた「カスタマイズ量産」が可能になるのではないだろうか。

そこではもはや3Dプリンターは1個単位の製造マシーンではなく量産体制を構成する一つの生産設備として機能し始めることが言える。

3DsystemsとGoogleが取り組むProject Araはスマートフォンという対象に絞っているが、これを皮切りに多くの電化製品で同様のサービスが開始されるかもしれない。

現在Googleは既に検索サービスの企業という枠組みから新たな製造業への進出に乗り出しているところだ。昨年度以降、何社かのモノのIT化による製造メーカーを買収している。

今後、両者がすすめるようなカスタマイズ性に対応した高速生産体制が整えば、他社に対して生産性と、顧客の細かいニーズに対応するという二つの面から圧倒的な競争力を持ちかねない。3Dプリンターの活用方法は今後注視し続ける必要があるだろう。

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