デスクトップ3Dプリンターをより高性能、実用的に。colorFabb_HTフィラメント

より実用的で高性能な3Dプリントフィラメントの開発

続々と新たなフィラメント開発を進めるcolorFabbPLA樹脂に銅や竹、木といった異なる素材を配合することで、さまざまな質感を実現する3Dプリントフィラメントを開発してきた。しかし、最近の開発の主力は高性能な3Dプリントフィラメントの注力に向けられている。

既に昨年度には炭素繊維配合のフィラメントに加え、コポリエステルベースの高性能フィラメントを開発。ABS樹脂PLA樹脂が主力であったデスクトップ3Dプリンターの造形に、革新的な動きを巻き起こしつつある。ちなみに炭素繊維は、カーボンファイバーの名前でも知られる新素材で、軽量・強靭という特性でさまざまな分野から注目が集まる素材。航空機や自動車、スポーツ産業など、金属の代替素材として使用が開始されている。

一方、コポリエステルは炭素繊維に比べればあまり知られていない素材。実は食品用器具類や容器類の素材として主力となる素材で、耐熱性と耐久性に優れ、耐破損性にも優れている。colorFabbは既に2種類のコポリエステルベースのフィラメントを発売しているが、パートナー企業であるコポリエステルの開発元、イーストマンケミカル社と共同で開発済みだ。(二つのコポリエステルのフィラメントについては「デスクトップ3Dプリンターの次期主力材料。コポリエステルのフィラメントNGENシリーズ」と「積層を高品質にしてくれるABSとPLAの長所を持つ特殊フィラメントが登場」をご参照ください。)

そしてまた新たに3つ目となるコポリエステルベースの新フィラメント、colorFabb_HTを発表した。このcolorFabb_HTはこれまでの二つのコポリエステルベースのフィラメントに比べ、より高性能で実用的なフィラメントだという。本日は、新たな高性能3Dプリントフィラメント、colorFabb_HTをご紹介しよう。

コポリエステルという素材を使用する理由とは

前回のコポリエステルベースの3Dプリントフィラメント、NGENシリーズでもご紹介したが、colorFabbの目的は、デスクトップ3Dプリンターでも高性能で安定した造形をもたらすことである。現状のデスクトップタイプの3Dプリントフィラメントは、ABS樹脂やPLA樹脂が主流となっているが、この二つの素材では高性能な造形と安定したプリント精度を実現することが難しい。

というよりも、素材としての特性を把握し、それに3Dデータの構築と3Dプリンターの特性を合わせることが求められるため、誰でも一定の精度を出すことが難しいのである。この問題をcolorFabbは、フィラメント開発の視点から解決しようというもので、そのための中心的な素材としてコポリエステルを選択しているのである。

ちなみにコポリエステルを選択した理由は、冒頭でご紹介した食品用容器としての特性以外に、価格としても手頃で、これまでのPLA樹脂やABS樹脂と同レベルの価格で提供できるからである。しかし、今回リリースされたcolorFabb_HTの最大の特性は、コポリエステルが持つ機能性と価格だけに留まるものではないようだ。そこにはデスクトップ 3Dプリンターのフィラメントに新たな価値をもたらす性能が存在している。

より実用的なプロトタイプの試作を目指すフィラメント

これまでにないタフな素材、タフなパーツを作れるフィラメント

まずはベーシックなcolorFabb_HTフィラメントの特性についてご紹介しよう。その特性を一言で表せば、デスクトップ3Dプリンターの材料ではこれまでにない「タフな素材、タフなパーツ」を作るためのフィラメントだと言える。その詳しい価格やスペックはまだ明かされていないが、最新の高性能コポリエステルをベースにしており、これまでのcolorFabb_XTアンフォラフィラメントとNGENフィラメントとは明らかに異なる性能を持つとのこと。

その最大の特長の一つが100℃にも及ぶ耐熱温度だ。また、耐熱性に加えて優れた耐久性と靭性をもち、タフなパーツを試作するのに最適な素材だといえよう。もちろん、通常のコポリエステルと同様、食品接触用途のための特定の米国食品医薬品局(FDA)の規制に準拠し、低臭気、スチレンフリーで造形中の臭もしない。しかし、colorFabb_HTフィラメントが持つ本当の価値は、こうした物性に留まるものではない。それはどうやら今回開発の元となった最新の高性能コポリエステルに秘密がある。

これまでにないタフなパーツ製造を可能にする。

圧倒的な寸法安定性を実現、厳格な寸法公差をクリア

今回colorFabb_HTフィラメントの開発に用いられた素材は、NGENフィラメントやXTアンフォラフィラメントにおいても共同開発を行ったイーストマンケミカル社のものが用いられている。それがアンフォラ™HT5300 3Dポリマーと言われる最新の高性能コポリエステルとのことで、上記でご紹介したような耐熱性、耐久性、靭性、低臭気、BPAフリー、といった特性に加えて、優れた寸法安定性が実証済みとのこと。

この実証では、多数のパーツを製造した場合の厳格な寸法公差をクリアしており、安定した3Dプリントが可能になるようだ。言うなれば、デスクトップ3Dプリンターで素材の造形に対する影響を気にすることなく、安定してプロトタイプやテストモデルを造形することが可能になるわけだ。ちなみにcolorFabb_HTフィラメントはカラーはブラック、ホワイト、ライトグレー、ダークグレー、透明の5色で発売予定。

圧倒的な寸法安定性を実現。厳密な寸法公差の実証実験にパス

まとめ フィラメントがデスクトップ3Dプリンターの価値を変える

colorFabbのフィラメント開発は、材料という側面から3Dプリントをより高度に、手軽にしようとするものである。3Dプリントの精度は、通常はマシーンでもあるプリンターの精度に目が行きがちだが、その部分をフィラメントの機能を向上させ、プリント精度を安定させることによって、新たな価値を提供しようとしている。

コポリエステルによるフィラメント開発はまさに、従来から不安定と言われてきたデスクトップ3Dプリンターの機能をより安定させ向上させるものにほかならないということができるのではないだろうか。もし従来のFDM(熱溶解積層法)によるデスクトップ3Dプリンターで、不具合に悩まされることなく、安定して高精度にプロトタイプが作れるようになれば、道具としての3Dプリンターの価値もまた一歩変わったものになるのかもしれない。

最終品を作るレベルのマシーンと、高性能な試作、実証実験などに使用することができるモデルを作れるマシーンと二分される可能性も高い。少なくとも、機能も確認できず、モックアップのように外観のみしか確認することができない機能は時代遅れになるだろう。3Dプリンターの主力材料であるプラスチックフィラメントの開発からも目が離せなさそうだ。

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