金属の光造形3Dプリンターの開発は家庭用と電子部品の普及を促進する

DLPを利用した金属用3Dプリンターの研究開発

3Dプリンターの製法は素材によって方法論も異なる。例えば樹脂であれば、一般的なのは樹脂を溶かして積層するFDM方式か、液体樹脂を光によって固める光造形方式が挙げられる。光造形モデルは、熱硬化性樹脂の代表とも言えるエポキシ樹脂に紫外線を照射し硬化させる方法のこと。

両者の違いは溶かして積み重ねるか、液体を硬化するかの違いだが、見た目の仕上がりやクオリティも異なるのが一目瞭然だ。一般的な低価格モデルの3Dプリンターでは、光造形タイプのほうが圧倒的に仕上がりが綺麗。光造形のほうが積層する際の層が目立ちにくくなめらかだ。ただし、光造形では使える素材がエポキシ樹脂のみで、FDMほどの材料バリエーションはなく、ストラタシスのFDMのように本格的なエンジニアリングプラスチックは使用できない。

この光造形方式で最も一般的な製法の一つがDLPデジタルライトプロセッシングと言われるもの。いま登場している低価格タイプの光造形3Dプリンターはほとんどがこのプロジェクターを使用したDLP製法によるものだ。

一般的に液状樹脂を材料として使用する技術だが、なんと、このDLP方式で金属材料を使用できるようにしようという研究が行われている。

金属用3Dプリンターは粉末をレーザーで焼き固める方式が一般的。レーザー方式では専門の資格がないと機械を取り扱うことができないが、DLP方式で金属パーツが製造できれば、一般家庭用での使用も可能になるかもしれない。本日はDLP方式で金属を製造使用と言う研究とその凄さをご紹介。

バイオセラミックで実用化されたDLPを金属製造に

もともとこのDLPという製法は1987年に発明された方法で、テキサス・インスツルメンツのラリー・ホーンベック博士によって開発されたものだ。DLPとはデジタルマイクロミラーデバイスを用いたプロジェクタ技術の1種で、樹脂やセラミックを硬化させる方法として今では一般的な製法になりつつある。

このDLP製法、樹脂の3Dプリンターでは馴染みがあるが、セラミック素材の3Dプリンターに使用されていることはあまり知られていない。

実はセラミック用では非常に高純度なセラミックパーツを作る方法としてDLP製法は注目されているのだ。その精度はなんと40μmレベルの解像度を保ちながら、優れた強度を持つ高性能セラミックが製造できるほど。

DLPの驚異的なのはセラミック素材の中でも99.6%の密度を要求されるバイオセラミックスの分野でのパーツ製造も可能な点だ。バイオセラミックとは、生体機能セラミックスとも言われ、人体に使用することができるセラミックスのことだ。骨として使用された場合などに、科学的に違和感なく結合できるものや、接触しても人体に影響がないレベルでなければならない。

超高密度セラミック材が製造可能

DLP製法によるセラミック製造3Dプリンター

画像出処:Formatecセラミックス

欧州の研究プロジェクトPHOCAMが開発した超高純度セラミックの3Dプリントを利用

画像出処:PHOCAM

DLP製法により超高性能な金属パーツが製造可能

なんといま、このバイオセラミック製造に使用されるDLP技術を金属製造の3Dプリンターに利用しようという研究開発が行われている。この開発を行うのはオランダのエネルギー研究センターで、このDLP製法を金属製造に適応させることで、従来には不可能であった、ハイテク金属の製造や新しい合金の製造が可能になるとしている。

DLPよりつくられた金属パーツは、セラミック同様、超高密度を保つことが可能で、従来の伝統的製法である、溶融による金属製造と同等の密度を再現できるとしている。

また、同時に電化製品にとって欠かすことができない高導電特性も発揮することが可能だ。金属パーツを製造する3Dプリンターはレーザー焼結による製法が一般的で、金属粉末を層ごとにレーザーで焼き固め積み上げる方式だが、DLPを使用すれば遥かに密度の高い金属パーツを作ることが可能だという。また、そのプリント速度も遥かに向上できるとのことだ。

DLPは伝統的製法による溶融の金属と同等の密度、高い導電性を再現可能

まとめ 家庭用や電子部品の3Dプリンターへ利用

現在この開発状況はいまだ不明だが、3Dプリント技術の研究開発は日進月歩だ。例えば、金属用3Dプリンターはレーザーを使用するため、一般の人が使うことは不可能だ。しかし、プロジェクター技術を使用したDLP製法ならば、樹脂と同じように家庭用の金属用3Dプリンターが作られるかもしれない。

また、金属の最大の特徴である導電性がDLPにより再現することができれば、基板製造などにも流用することが可能になるかもしれない。いま電子回路を3Dプリントする機器などが開発されているが、その多くが導電性インクを使用している。

しかし、導電性インクは、金属とは違い、導電性が悪く、高性能な電子機器を作ることは不可能だ。なんといっても導電性には金属の密度、純度が最も影響することから、高密度なものが必要になる。

こうした、側面から見てみるとDLPによる金属パーツの3Dプリンターは計り知れない可能性と大きな影響力を秘めているといっていいだろう。その開発状況が楽しみだ。

光造形の原理と仕組み、種類についてはこちらをどうぞ

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