島精機製作所のホールガーメントと独自アルゴリズムのコラボ。3Dプリントカスタムシューズ

実用的なシューズの3Dプリントカスタマイズが登場

3Dプリンターのカスタマイズ性が最も発揮されるプロダクトの一つが、人間の身体に身につけて使用するものだ。既にインプラントや補聴器などの分野で使用が盛んだが、医療用以外にも徐々に拡大し始めている。その最も代表的な製品が靴だろう。

既に欧米では足病対策の一環としてインソールの製造には3Dプリンターが利用されているが、シューズ本体も3Dプリンターの素材が拡大するとともに登場してきている。例えば以前もご紹介したSOLSはスマートフォンのアプリケーションで足の写真を撮ることでカスタマイズできるサービスを開始している。

また、アディダスやナイキなどの有名シューズメーカーも部分的にではあるが3Dプリンターを利用しはじめている。このような状況の中、新たにフィラデルフィア大学初のスタートアップ企業が独自アルゴリズムによって構成する三次元構造の3Dプリントシューズを開発した。ドイツのデュッセルドルフで開催される展示会GDSフェアでお披露目される予定だ。

独自アルゴリズムでシューズの構造からカスタマイズ

室内でも靴を履く欧米だけではなく、日常生活において外出する際にも靴のサイズは極めて重要になる。近年の研究では腰痛や肩の痛みの原因として靴のサイズが影響しているということが証明された。また、こうした関節痛いがいの体の内部の健康状態にも靴のサイズは影響しているとも言われている。

そのため、いかに自分の足に最適にフィットしているかが重要となるわけだ。また、足のサイズは同じ人でも左右で微妙にことなり、こうした左右の微調整までできるのが3Dプリントの醍醐味だと言えよう。しかし、その一方で現在使用することができる3Dプリンターの素材は極めて限定的であり、人間の身体に快適さを与えるフィット感と、はき心地はなかなか実現することが難しく、3Dプリントシューズが市場に流通するには至っていないのが現状である。

だか、今回ご紹介するフィラデルフィア大学初のスタートアップFootprintFootwearの独自アルゴリズムは、この課題を解決する可能性を秘めている。彼らの独自アルゴリズムでは、靴を構成するあらゆる要素、すなわち足のサイズ、足首、膝、腰、背中の位置などを計算にいれ瞬時にその人にとって最適なシューズを構成することができる。

また、それは単純な靴の外観的やサイズではなく、シューズを構成する構造自体を変化させる画期的なものである。具体的にはフッドヘッドとミッドソールの部分で、3Dモデリングでは発泡体のような細胞構造のカタチをしている(シューズのボディ本体の製造については後述する)。

さらに、上記で述べたような個人個人のフィジカルデータをスキャニングし、発泡体の細胞構造の大きさ、形状、位置をカスタマイズする。ちなみに、この3Dプリントシューズに使用されている素材は柔軟性のあるフィラメントNinjaflexだ。これはあらゆるフィラメントで実験した結果、Ninjaflexが消費者が靴として使用するのに耐えられる柔軟性を最も持ち、重い負荷の元でも耐えられる耐久性を持つことがわかった為だという。

また素材に関しては、レーザー焼結用のflexナイロンも将来の候補に入れているとのことだ。

足の形状だけではなく、体型から最適なカスタムフィットを計算
特殊な発泡体の細胞構造でフィットを再現
アルゴリズムにより形状や位置を変更
柔軟性のあるフィラメントNinjaFlexで再現

FootwearFootprint動画

東洋のマジック、島精機製作所の衣服3Dプリンターでボディを製造

この3Dプリントシューズの画期的な点は、これだけではない。彼ら、FootprintFootwearの3Dプリントが担っている部分は、フッドヘッドとミッドソールの部分だけで、足全体を覆うシューズ本体は、全く異なる機械を用いている。それが、世界中から東洋のマジックと絶賛される、島精機製作所の世界初のコンピューター制御横網機を使用している点である。

島精機製作所は、このコンピューター制御横網機で世界シェアの雄に60パーセントを占める隠れたチャンピオン企業だ。このコンピューター制御横網機は、データから直接衣類を作れる、いわば、衣類の3Dプリンターと言ってもいい。今ではグッチやプラダ、ベネトンなど名だたる世界のスーパーブランドの衣類の製造にも使用されている。

このマシーンはホールガーメントシステムと言われており、最大の特徴は、裁断や縫製をすることなく、デシタルデータから数十分で衣服を作り上げることができる。これまでシューズを3Dプリンターで作る動きが登場してきたが、どの企業も足に直接フィットする部分までプラスチックフィラメントで作られており、とてものこと履き心地がいいとは思えない状態であった。

そうした点からいうと、FootprintFootwearのやり方は、エンドユーザーの快適さに徹底してこだわった結果だと言えよう。

ボディはホールガーメントシステムで製造

まとめ 機能性と実用性、ユーザーニーズを満たす真のプロダクト利用

今回ご紹介したFootprintFootwearは、これまでの3Dプリントシューズとは違い、ユーザーが実際に使用することができる、実用的な3Dプリントシューズを製造しようとしている。

独自アルゴリズムによって構造自体を変化させる発泡体の細胞構造、さらには足本体をおおう部分は、島精機製作所ホールガーメントシステムによって快適性を実現している。いくら3Dプリンターでカスタマイズが出来たとは言え、実用性に乏しければ意味がない。

また同時に実用性が乏しいプロダクトでは、3Dプリンターの本来の凄さが全く活かしきることができず、単なる゛趣味゛の世界で終わってしまうということが言えるだろう。真のプロダクト開発は、あくまでも実用性と機能性があり、ユーザーの付加価値を高め、さらにはデザインも優れたものでなければならない。そうした点から見れば、FootprintFootwearの開発する3Dプリントカスタマシューズは真のプロダクトだといえよう。

シューズの3Dプリントカスタマイズの記事はこちらもどうぞ

i-MKAERでは光造形3DプリンターForm3+やレーザー焼結3DプリンターFuse 1Raise3Dシリーズなど多彩な3Dプリンターのノウハウ、販売をご提供しています。ご質問や無料サンプルや無料テストプリントなどお気軽にご相談ください。