3Dプリンターを射出成形並みの量産マシーンにする開発

現在主流の3Dプリンターは20年前の技術

3Dプリンターの製法が次々と特許切れになり、続々と新たな3Dプリンターが登場しているが、実際どのレベルまで利用が可能なのだろうか。クオリティ、生産スピード、機械としての安定性、どのレベルで見ても試作品の域を出ない。極端な言い方をすれば、20年前の技術に過ぎないと言える。製品開発という面から見れば、試作品のチェックや改良といった作業が格段に楽にはなったが生産という面からはまだまだ不十分である。

例えば、プラスチックの生産方法で代表的な射出成形と比べた場合も、仕上がりの美しさやバリエーション、生産性など、すべての面で3Dプリンターは劣っている。しかし今、この3Dプリンターの足りない側面を補い、新たな生産マシーンとして確立させようという開発が開始している。本日は3Dプリンターを量産マシーンにするための新たな開発を行なう企業Impossible Objectsをご紹介。既にベンチャーキャピタルから280万ドル約3億円の出資を受け世界初となる3Dプリント複合材料を発表した。

射出成形に匹敵する生産性と、最終品に適した素材複合技術

Impossible Objectsの開発計画は、3Dプリンターの現状の課題、生産性の悪さ、仕上がりのクオリティ、材料の限界といった部分を改善し、高品質で量産性の高いマシーンにすることだ。

Impossible ObjectsのCEOカプラン氏によると、「現在の3Dプリンターは20年前の技術。プロトタイピングには適しているが、伝統的な製造方法にくらべ生産スピードが遅すぎる。」と述べている。これを改善し、高度に機械的特性を備えた物体を作ることができる新技術を開発するという。

また、高速量産だけではなく、異なる素材を複合したパーツを作る技術を開発しており、カーボンファイバー、ケブラー、ガラス繊維などによる複合強化材料の製造も可能にする。既に炭素繊維とガラス繊維を複合し、小型のファンブレードや、いくつかのパーツ類を製造している。この複合材料を作ることの意味は、現在多くの3Dプリンターで使用されている材料が限定的であり、さまざまな製品を作るために制限があるためだという。

この炭素繊維やガラス繊維による複合材料は既存の3Dプリンター用の熱可塑性樹脂や金属粉末などよりもはるかに最終品としての使用に適しているとのことだ。Impossible Objectsは最終的に、航空宇宙産業や自動車業界、医療業界での製造をターゲットにしており、約1年後に量産性が高く最終品として使用できる3Dプリンターを市場に投入する計画だ。その量産技術は現在特許出願中であり、射出成形に匹敵する生産速度だという。

Impossible Objectsが開発する量産3Dプリンターの特長

  • 射出成形に匹敵する生産スピード
  • 現在の3Dプリント技術FDM、SLA、SLSより100倍速い
  • 素材複合技術で、現在の3Dプリント材料より2倍から10倍強い
  • 高分解能で千分の1インチの高解像
  • 材料の複合により、素材にさまざまな機能を付与できる。
  • 強度、耐熱性、耐薬品性、剛性、柔軟性などの機械的強度を付与できる
  • 対応素材:炭素繊維、ガラス繊維、ケブラー、ナイロン、ポリエステル、シルク、コットンなど

まとめ

3Dプリンターの特許切れに関する記事で、多くの製法特許が申請されたのが2012年だと述べたが、特許切れに沸き立つ背後で、さらに時代の先を見据えた開発が行われつつある。既に3DsystemsがGoogleと開発する高速量産3Dプリンターが開発され、2012年度に最多の特許申請を行っているのはストラタシスだ。

またここにきて、新たなベンチャーが、射出成形並みの強度と生産性を持つ新技術の開発に着手している。既に3Dプリンターで先を行くグローバルリーダーたちは、全く違う概念の製造機器、すなわち、カスタマイズされた最終品を高品質で高速に生産できるマシーンの開発を行なっているのではないだろうか。2015年以降、新たな機種が続々と登場するかもしれない。

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