産業廃棄物が通貨の変わりになる!プラスチックバンクの3Dプリント交換プロジェクト

産業廃棄物の不法投棄で悩む開発途上国

プラスチックは家電製品や家庭用品などありとあらゆる製品を生成するための素材としてなくてはならないものだが、実は発展途上国ではプラスチックの産業廃棄物処理が問題になっている。

いわゆる開発途上国に分類される国の人口は世界人口の70%以上の比率を占めると言われており、その大半の人々が所得が低い貧困層に分類されている。こうした開発途上国で今一番問題になっているのが不法投棄による廃棄物処理だ。

ゴミや廃棄物の収集体制が未整理であることやインフラ体制などが整っていないことが原因で、野積いわゆる野ざらしの不法投棄が問題になっている。こうした不法投棄は地元に住む人々の衛生を犯し、環境汚染を引き起こす原因だ。

日本やアメリカなどの先進国では産業廃棄物処理やリサイクル技術が発展しているが開発途上国では処理場の未整備や、リサイクル技術の不足、行政対応におけるごみ処理の優先順位の低さなどから、廃棄物処理に手が回らない状況にある。

このような中、こうした開発途上国の産業廃棄物(特にプラスチック)を回収し、なおかつ現地の貧困にあえぐ人々に対してメリットのあるリサイクルプロジェクトが発足した。

キックスターターindiegogoで第1次資金調達が完了したこのプロジェクトはプラスチックバンクと呼ばれるプロジェクトだ。

プラスチック廃棄物を3Dプリント製品と交換

プラスチックバンクはクラウドファンディングindiegogoで第一次資金2万ドルの調達に成功したが、具体的にどのようなことを行なおうとしているのだろうか。

プラスチックバンクは開発途上国の貧困にあえぐ人々からプラスチック産業廃棄物を回収し、その代りに家庭用品やツール、3Dプリントされたパーツと交換できるようにするというものだ。

回収されたプラスチック産業廃棄物は全世界のプラスチック再利用センターで新しいプラスチック素材に生まれ変わるというもの。

このプロジェクトは開発途上国の人々にとってはゴミにしか過ぎないプラスチック廃材を自分たちの生活に少しでも役立つアイテムに変えてくれる仕組みを提供し、同時に開発途上国の土地や海、川などの環境汚染を減少させることができる。

またプラスチックリサイクルセンターは新たな製品を製造するための原料を調達することが可能になる。

特に3Dプリント技術の更なる浸透によってオンデマンドで生産されるプラスチック製品の需要がかなりの比率で伸びることから、プラスチック素材の需要はますます高まると考えられているからだ。

プラスチックバンクのプロジェクトは第2段階まで予定されており、第一段階の20,000ドルの資金調達が行われた。

この2万ドルの資金の目的はプラスチック廃棄物を回収するためのシステムとソフトウェアプラットフォームに充てられる。

第二段階は10万ドル(約1,000万円)の資金調達を計画しており、世界中のプラスチック再利用センターとの物流システムや在庫管理システムの増築に充てる予定になっている。

メリット

  • 開発途上国:自国の環境汚染の削減。川、海、土地のクリーン化につながる
  • 貧困層の人々:廃棄物を回収することで家庭用品など身の回りの製品が手に入る
  • リサイクルセンター:今後需要が高まるプラスチック素材の材料が手に入る

開発途上国の廃棄物不法投棄画像1

開発途上国の廃棄物不法投棄画像2

世界最大のプラスチック廃棄処理企業 MBAポリマーと提携

プラスチックバンクが行うこのプロジェクトは世界最大のプラスチック再利用を行う企業MBAポリマーと提携していると考えられる。

プラスチックバンクの顧問としてMBAポリマーの社長であるマイク・ビドル博士が参画しているからだ。

MBAポリマーは1992年にアメリカのカリフォルニアの博士のガレージで創業された企業だが、今ではアメリカだけではなく、中国、オーストリア、イギリスに再処理工場を持ち、年間で300万ポンド(約13万6千トン)のプラスチック廃棄物の再利用を行っている。

世界各地から集められたプラスチック廃棄物は、上記の最先端再処理工場で加工され、新たなプラスチック製品を製造するための高品質な原料として生まれ変わっている。

下記はMBAポリマーが再加工したプラスチック原料で製造された製品だ。みなさんが見覚えのある製品もあるかと思われる。

 

※画像元:MBAポリマー

まとめ

プラスチックバンクの取組はまだ始まったばかりでようやく第一次の資金調達に成功したところ。プロジェクトの初回立ち上げは2014年2月に中南米ペルーのリマでスタートする予定だ。

プラスチック廃棄物を回収するかわりに現地の人々には生活必需品となる製品や3Dプリントされた製品などを提供される。

プラスチックバンクはこのプロジェクトを通じて、「教育、訓練、必需品および3Dプリントサービスなど、様々な機会のための通貨としてプラスチック廃棄物を収穫する貧しい人々を支援します」と発表している。

具体的な回収方法や対価となる製品の交換システムの詳細は不明だが、MBAポリマーと提携することにより、あらゆる種類のプラスチック廃棄物の処理に対応し、包括的な30段階のリサイクルシステムが構築されるとのことだ。

数年前から社会企業という概念が提唱され、環境問題の解決など企業がCSRとして取り組む事業が増えてきているが、営利を目的とするビジネスと社会的価値を追求するCSRでは、利益化という部分でなかなか相容れない要素が問題視されている。

そのため一般的な社会企業もしくはCSR事業は、短期的な利益を生み出すものとしてではなく、10年、20年先などの長期的なスパンで見た場合の企業イメージや何世代にわたるファンを育てるという要素が強い。

しかし、プラスチックバンクの立ち上げる廃棄物再利用プロジェクトは関わる全ての立場の人々に利益をもたらすビジネスモデルだと思われる。

まだプロジェクトは始動したばかりだが、今後どのような影響を各立場の人々にもたらすのか注目に値する。

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