ポリカーボネート系フィラメント登場。デスクトップ3Dプリンターで使用可能

ポリカーボネートのデスクトップ3Dプリンター専用フィラメントが登場

世界で最も幅広く使用されている樹脂素材の一つがポリカーボネートだ。家庭用電化製品や自動車部品、食器、などなど使用されているプロダクトを上げればキリがない。その特徴は最高度の耐久性と加工のよさ、発色や透明性が主な理由だ。一般的に多用されるABS樹脂の5倍の耐衝撃性を持ちコンシューマプロダクトから、工業用まで幅広く使用される素材といえる。

例えば、こうした汎用性、加工性のよさから、iPhoneなどのボディにも使用された素材と言える。ポリカーボネートについてはポリカーボネート(PC)の特性と用途 iPhoneから工業用ネジまで」で詳しく述べているのでそちらをご参照いただければと思うが、これほど汎用性が高く、素材としてさまざまなプロダクトに使用されているにも関わらず、3Dプリンターで使用されることはほぼ少ない。

ポリカーボネートは射出成形などのプラスチック加工の王道には最適な素材として有名だが、3Dプリンターで使用されているのは僅かにストラタシスのハイエンドなFDM3Dプリンターで使用されているぐらいだ。廉価版とも言えるデスクトップタイプの3DプリンターではABSフィラメントPLAフィラメントがほぼ主流で、その他のプラスチック素材はなかなか使用されていないのが現状とも言える。

しかし、今回新たに、このプロダクトデザインで汎用性が高いポリカーボネートがデスクトップ用のフィラメントとして登場することとなった。本日は3Dプリント材料メーカーPolymakerが発表するポリカーボネート系3Dプリントフィラメントをご紹介しよう。

高性能なポリカーボネートの特性をフィラメントで再現

Polymakerはアメリカ、ヨーロッパ、中国に拠点を持つ3Dプリントフィラメントメーカーだ。今回のポリカーボネート系フィラメントの開発にあたり、ハイテクポリマー材料のリーディングメーカーCovestroとの提携によりデスクトップ3Dプリンターで使用できる素材を生成することに成功した。

Covestroは全従業員17000名を抱えるポリマー分野における巨大器用で、全世界30箇所に生産設備を持ちヨーロッパ、アジア、アメリカ全域に展開するこの業界の巨人だ。同社の開発するハイテクポリマーは、自動車や建設などの産業部門に始まり、電子、電気分野やスポーツ、レジャーなどあらゆる分野に材料供給を行っている。

今回は、Polymakerとともに完全にデスクトップタイプのFDM3Dプリンターで使用することができるポリカーボネート系のフィラメントを2種類開発した。今回開発されたポリカーボネート系フィラメント、Polymaker PC-プラスとPolymaker PC-Maxは、印刷温度を一般的な300℃から320℃の範囲から、ほぼすべてのデスクトップタイプのFDM3Dプリンターが達成可能な温度である250-270ºCまで減少させることに成功した。

これにより、より低い印刷温度が印刷工程中の熱関連の反りや変形の可能性を減少させることになる。このポリカーボネート系3DプリントフィラメントであるPC-PlusとPC-Maxは、当然のことながら、PLA樹脂とABS樹脂の一般的な3Dプリントフィラメントよりも高い機械的特性を持ち、デスクトップ3Dプリンターによるプロトタイプ製造の幅を一気に拡大してくれる。

またこの二つのポリカーボネート系フィラメントは、優れた材料特性も発揮し、3Dプリンターで造形後の後処理に柔軟に対応される。主に塗料での被覆や、平滑化にも対応しており、3Dプリンターで造形後も美しい仕上がりを再現することができるというわけだ。

Polymaker動画

デスクトップ3Dプリンターでエンジニアリングレベルを発揮する可能性

今回のポリカーボネート系3Dプリントフィラメントの開発にあたり、Covestro社、バイエルマテリアルサイエンスは、高性能なハイテクポリカーボネート樹脂を供給しており、デスクトップタイプの3Dプリンターに最適化されるようにPolymakerの材料科学者やCovestroチームが開発を行った。

これにより高性能なポリカーボネートの機械的特性を発揮でき、尚且つ高い後処理機能まで搭載できるようになったという。この新素材の開発は、これまでプロトタイプ製造がメインであったデスクトップタイプの3Dプリンターの役割を大きく変える可能性を秘めている。

今回のポリカーボネート系フィラメントPolymaker PC-プラスとPolymaker PC-Maxの開発にあたり、PolymakerのLuo博士は以下のように述べている。

「ポリカーボネートは、3Dプリンターを使う人々にとって非常に望ましい特性を有している。これは創造的なデザイナーとエンジニアにとって生産プロセスのあらゆる段階でより良いものをもたらす。以前にはデスクトップ3Dプリンターで不可能であったエンジニアリングと機能特性を開く」

Polymaker PolyLIte PCスペック

  • フィラメント径:1.75mm、3.00mm
  • サイズ:750グラム
  • カラー:1色
  • 価格:$ 39.99-$ 46.99
  • 発売日:未定
  • 耐熱性:110℃以上に耐える
  • 強度:ABSとPLAに比べてはるかに改善された機械的強度を持つ
  • 耐衝撃性、靭性を持ち、耐薬品性も持つ

まとめ 新たな材料が製品開発とものづくりの幅を拡大

ポリカーボネートは優れた機械的特性、美しい仕上がり、加工のしやすさなど、からプロダクトデザインの現場でも最も重宝される素材の一つだ。従来では金型による射出成形での加工が中心だが、今回ご紹介したPolymakerによるPolymaker PC-プラスとPolymaker PC-Maxのように安価なデスクトップタイプの3Dプリンターで使用することができれば、製品開発がより一層スムーズになる。

今回のPolymakerの発表では、これまでのデスクトップ3Dプリンターでは再現することができなかったレベルまで造形できるということから期待が大きい。また、ほぼ全てのデスクトップタイプの3Dプリンターで使用できることから、従来の金型を使用した加工技術とは違い、手軽にポリカーボネートを使ってプロトタイプを作ることも可能になるだろう。新たな素材の登場は、これまでの製品開発プロセスを大きく変更してしまう可能性を秘めている。そんな期待が高まるフィラメントだ。

ポリカーボネートフィラメントについては「3Dプリンターのポリカーボネート(PC)フィラメント完全ガイド」で詳しくご紹介していますので其方もご参照ください。

3Dプリンター用フィラメントの完全ガイド!網羅的な情報紹介

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