スタンスミスの3Dプリントポップアップショップ
アディダスの代表的なスニーカーと言えばスタンスミスだ。
スタンスミスシューズは50年前に発売を開始してから長年愛用されている人気商品で、シンプルなデザインとアメリカのテニス選手スタンスミスの顔が印象的な商品だ。
これまで累計で4000万人以上に購入されている。
スタンスミスのように、アディダスは創業以来変わらない伝統的なブランドを保持している企業だが、同時に最先端技術を取り入れる先進的な企業でもある。
2014年の1月にロンドンで行われた取組は、まさに伝統と最先端を融合させたアディダスらしい取組だ。
アディダスはロンドンでこのスタンスミスの靴箱を模した巨大なショップをオープンさせた。
その靴箱の中には大量の3Dsystems製Cube3Dプリンターが陳列されている。
ここではスタンスミスの靴のレースロック部分をカスタマイズできるというサービスが受けられる仕組みで、自分の顔や好きなマークなどをプリントすることが可能だ。
スタンスミスの巨大な靴箱のポップアップショップ
陳列されるスタンスミス
3DsystemsのCube3Dプリンター
レースロック部分を自分の顔やマークにカスタマイズ
オンリーワンのカスタマイズ製造が拡大する
アディダスは、既に3Dプリンターは使用している実績がある。
今まではアディダスも試作品製造において3Dプリント技術を使用してきている。アディダスが発表しているところでは、3Dプリント技術を使用することで、今まで1チーム12人の専用技術者が4週間から6週間程度の時間をかけて試作品の製造開発に取り組んでいたが、1チーム2人で1日から2日で試作品が製造できるようになったと発表している。
劇的にコストとリードタイムを削減することに成功しているが、一方で今回のスタンスミスのショップは、3Dプリント技術の最大の特長であるカスタマイズを最終製品の製造に利用する動きだ。
将来的にはスニーカー自体の完全なカスタマイズ製造を目指した試験的取組なのかもしれない。
既に靴ではNIKEがアメリカンフットボール選手用に3Dプリンターで靴底部分を製造することに成功しているし、医療用だが、Feetzという企業が専用ソフトウェアで靴を3Dプリント製造すると発表した。
また靴ではないが靴底のインソールはアメリカとイギリスでは完全な3Dプリント製造に切り替わりつつある状況だ。
今後3Dプリント技術の精度や造形スピードが向上すればますますカスタマイズ製造の流れは拡大するに違いない。
まとめ -最先端技術を製造プロセスに組み込む動き-
アディダスは自社の製造プロセスを最先端技術と融合させることで、更なる革新的な製品を生み出そうという企業文化を持っている。
ドイツ政府が行うハイテク戦略の一環であるSpeed factoryというプロジェクトを進め、従来スポーツメーカーとはあまりかかわりのなかった自動車産業の企業や、ソフトウェア・システム研究開発を行うミュンヘン工科大学、最先端の織物技術や繊維技術を研究開発するアーヘン大学と提携関係を結んでいる。
アディダスはこうした取り組みに対して、製造プロセスと革新的な製品と最先端の情報技術を組み合わせることで、次世代に対応した企業体質と、製品提供を行うことを目指している。
今回のスタンスミスの3Dプリントプロジェクトもその一環と言えるだろう。
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