パーツ類の3Dプリント製造でコスト削減と品質向上
3Dプリンターの性能の向上にともなって、従来の使用用途(単純な試作品製造)以外にダイレクトにパーツや最終製品を製造する動きが続々とでてきている。
特に航空宇宙産業や医療分野、自動車産業などで、3DCADデータからダイレクト製造する動きが活発化している。
航空宇宙産業ではジェットエンジン用のパーツ類を3DCADデータからダイレクトに製造する方向に切り替えが進みつつあるが、3Dプリントされた無人航空機が完成した。
この試みを行ったのはアメリカジョージア州に本拠を置くArea-I社で、737モデルプテラという無人航空機を3Dプリントで製造することに成功した。
主に製造された各パーツは燃料タンク、補助翼、制御面、フラップといった部分。
今回737モデルを3Dプリント製造に切り替える目的は、各パーツ類の組み立て作業を減少させ、製造に関するリードタイムを短くすることを狙ったものだ。
使用された3Dプリンターは3Dsystems社製のSLSシリーズで、ナイロン粉末材料を何層にも積層して形作る手法。
これにより補助翼の製造において、従来は24の工数が必要であったものが、データからのダイレクト製造によりトータルわずか3日間で組み立てまで行うことが可能になった。
また耐久性においても、精密な積層レベルで形成されるため、従来の組み立て方式に比べて向上している。燃料タンクにおいても同様のメリットが得られている。
737モデルの燃料タンクは従来は鋼やその他の金属から成り立っていたが、3Dプリンターで製造するナイロン素材(特殊なシールド材で加工)によりはるかに軽量化することが可能になった。
各パーツ類の3Dプリント製造への切り替えは、結果として最終製品の耐久性を向上させ、飛行時間を大幅に向上させるといった最トータル的な性能アップを果たすことができる。
3Dプリントされた補助翼
3Dプリントされたコントロール・サーフィスを取り付けた翼
まとめ -3Dプリントは企業の競争力を高める―
Area-I社の737モデルの3Dプリント製造による特長は①コスト削減、②リードタイムの短縮、③耐久性向上、④軽量化、⑤最終製品の燃費向上といったメリットをもたらす。
Area-I社のアリー氏は「添加剤製造が完全に航空機のデザイン方法を変更してしまった」と述べている。まさに737モデルの3Dプリント試作は、3Dプリント技術の飛躍的向上は従来の製造プロセスを変えるだけではなく、パーツのデザインにも大きな影響を与えていることを示唆しているのではないだろうか。
もちろん、すべての分野やパーツ製造において3Dプリント技術が適用できるわけではないが、今回の737モデルのような導入実例は、3Dプリント製造を最大限有効化したものだろう。
例えば、メリットを極端に言ってみると、航空機の製造では二つのコスト低下、①製造面、②燃料面、が可能になり、結果として航空機を利用するエンドユーザーにとっても利用料の低下を招き大きなメリットをもたらす、といったことが可能になる。
つまり、利用目的に合致した高度な3Dプリント技術の導入は、その企業の提供する製品の品質を高めるだけではなく、コスト低下による価格低下を可能にし、顧客に対しても他社より一歩すすんだ競争力をもつことが可能になるのだ。
そのためモノづくりに関わる企業にとっては直接的に流用できなかったとしてもその利用方法を知っておく必要があると考えられる。
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