カーボンファイバーの特性とその利用範囲
FDM 3Dプリンター用の素材が次々と登場してきている。もともとプラスチックは分子と分子を組み合わせてさまざまな特性を出していることから、開発しやすいともいえるが、金型ではないオンデマンド生産ができる3Dプリンターで新たな素材が増えるということは、それだけモノづくりの可能性を広げるものだ。
本日ご紹介する3DXTechのカーボンファイバーフィラメントもそのうちの一つ。カーボンファイバーは炭素繊維とも言われ、繊維強化プラスチックの一つだ。
その特長は、軽くて機械的強度に優れ、耐食性などに優れている。いわば極端な表現を使えば金属並みの強度を持つ軽量化されたプラスチックと言ってもいい。
こうした軽くて強いという物性から、最近では飛行機のボディや自転車のボディなどに使用されている。ちなみに炭素繊維では我が国の東レ社が圧倒的な世界シェアを持ち、優に32%の比率を占めている。最近のニュースで話題になったがアメリカのボーイングから1兆円の炭素繊維の受注を取り付け、大型旅客機ボーイング777Xにも使用が決定された。
そんな炭素繊維だが、こうした乗り物以外にも多くの製品に利用が開始されている。例えばテニスのラケットやゴルフクラブのシャフトなどもその最たるもの。先日ご紹介した折り畳み可能な電動自転車のフレームも炭素繊維だ。
こうした炭素繊維の利用拡大の背景には、価格自体が20年前にくらべ約5分の1以下に低下していることが挙げられるが、その優れた物性からモノづくりの可能性を拡大に広げている。そしてその炭素繊維が試作製造で大きな力を発揮する3Dプリンターで利用することができるようになれば、さらに製品開発の幅が拡大すると言えるだろう。
炭素繊維で強化されたABS樹脂、PLA樹脂、ナイロン
今回3DXTech社がリリースしたカーボンファイバー配合の3Dプリントフィラメントは、何と、3種類のプラスチックと融合させたものだ。それは3Dプリンターのフィラメントで最も頻繁に使用される3種類、ABS、PLA、ナイロンポリアミドの3種に炭素繊維を配合したものなる。
素材自体の詳しい物性や、特長、主な利用用途についてはそれぞれの頁をご参照いただければと思うが、簡単に物性や特長をご紹介すると、ABS樹脂は、プラスチックの家庭用品の中で、最も多く使用されている素材だ。
パソコンやテレビなど工業用製品のボディで多用されている。その特性は粘りがあり耐久性が高く加工しやすいという特長がある。一方PLA樹脂は、植物由来のプラスチック素材で、ABS樹脂に比べ硬いが耐熱性に弱い。
ナイロンポリアミドはもともと繊維の代替品として作られた素材で、綿の10倍の引張強度を持ち、耐熱性や耐摩耗性に優れる素材。工業用パーツで多用される素材。
いわばこうした3種類の特性に炭素繊維の強みである軽量と強度が大幅に追加されることになる。発売は12月からでABS樹脂とPLA樹脂に配合されたものは38ドル、ナイロンポリアミドに配合したものは48ドルだ。それぞれ500gでフィラメントの径は1.75mm。
まとめ カーボンファイバーフィラメントは試作や製品開発の幅を拡大
この3種類のカーボンファイバーフィラメントの物性試験は終了し、既に十分な機械的データもそろっているという。発売は12月になるが、このラインナップの登場で、FDM3Dプリンターの使用範囲はさらに拡大するだろう。カーボンファイバーの軽量・優れた機械的強度という特性を生かした試作開発の幅が広がることになる。
例えばカーボンファイバーを使えば折り曲げ加工などの幅も一気に広がる。これまで通常の間げ木や鉄などで使用してきたパーツ類も、代替品としてカーボンファイバーを手軽に使用することができる。また、フレームのような構造体の試作にも優れた物性を発揮するだろう。こうしたカーボンファイバーが1個単位で試作できるということはそれだけ多くの製品の改良や機能向上をもたらすことにもつながる。
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