低価格3Dプリンターが一般消費者に普及しない理由
3Dプリンターの低価格化は消費者向け市場への普及を促進させる大きなフックになっている。しかし現状では一般消費者が購入するところまでは言っていない。
1台3万円から5万円で購入できる3Dプリンターも登場しているが、いまだ中小企業やデザイナー、起業家が使用するにとどまっている。その理由はどのようなことが考えられるのだろうか。
まず根本的な問題として3Dプリンター自体が広く認知されていないということがあげられる。ここ数年で急激に注目されてきたが、まだモノづくりに関わる人々の存在であり、普遍的な存在ではない。またそれに伴ってなかなか一般人が用途を見いだせないのが現状のところだ。
その原因の一つとして、誰でも簡単に使えるものではないということが大きいだろう。
3Dプリンター自体もそうだが、プリントするための3Dデータの取り扱いに慣れている人は極めて少ない。それ以前に3Dデータを作るための3Dデザインソフトを使いこなせる人は驚くほど少ないのが現状だ。ライノセラスやAUTOCADなどの3Dデザインソフトはプロダクトデザインや建築など設計分野に関わる専門職の人々にしか扱えないもの。
到底一般人が手軽に扱えるようなものではない。そのためいくら3Dプリンターの開発が進み低価格で高性能な機種が登場したとしても一般家庭で気軽に扱えることは無いだろう。
進む3Dソフトと3Dアプリケーションの開発
しかし一方でShapewaysやi.materialiseのようにオンライン上で3Dデザインをカスタマイズして販売するサービスや、簡単にスマートフォンのカメラアプリで撮影し、3Dカスタマイズできるサービスが登場している。
こうした3Dソフトの技術は新たな消費者向け市場の扉を開く鍵になりつつある。例えばShapewaysやi.materialiseで購入できるアクセサリなどは、ユーザーがオンライン上で好きな形状にカスタマイズすることが可能だ。
またインソールのカスタマイズ製造を行なうイギリスのSOLSは、スマートフォンのカメラアプリで自分の足の写真を撮影するだけで、自分に合ったインソールが提供される。
同じようにイヤホンの3Dプリントカスタマイズ製造を行なうOWNPHONESもスマートフォン専用のスキャニングアプリで個人にフィットするイヤホンの製造を可能にしている。
このようなサービスの普及は自分だけのオンリーワンのモノが欲しいといった人々の飽くなき欲求にこたえるもので、大いに3Dプリンターの存在を知らしめることにはつながっている。
しかし、本当に一般家庭への普及を促進するためには、これでもまだ不十分だと言える。もっと誰でも簡単に楽しめて自由に自分のアイデアや思いをカタチにすることができるソフトでなければ意味がない。そんな中、二次元の画像データを誰でも簡単に3Dプリンターで使える3Dデータに編集できるアプリケーションが登場した。
写真やスキャン技術を利用したスマホアプリで3Dプリントカスタマイズを提供する企業の記事はこちらをどうぞ
誰でも二次元データを3Dデータに変換できる「eXtrudy」
本日ご紹介する3Dアプリケーション「eXtrudy」は、CADソフトの知識が無くても誰でも簡単に二次元画像を三次元データに編集できるAndroid専用アプリケーションだ。数年前から開発がすすめられていたソフトウェアで1年前にはWindows版が登場している。
今回登場したのはAndroid版のアプリケーションで、Androidのタブレット端末で簡単な3Dデータを作ることができる。使用方法は至って簡単で、ユーザーは自分の好みの写真や画像を選択、その後ちょっとした編集を行なうだけで、3Dプリンターで出力できる3Dデータにすることができる。主にジュエリーや、ペンダント、コイン、メダル、キーホルダー、といった小物に最適だ。
eXtrudy Androidタブレット版
eXtrudyから3Dプリントされたアクセサリ
このeXtrudyで画像データを開くと画像がメッシュ状に変換される。その後天地左右のサイズや幅の調整を行ない自動で体積計算、3Dプリンターに対応したSTL形式のファイルに変換してくれる。そのためわざわざ3Dモデリングを行なう必要はなく、全ての操作はアプリケーション内の矢印バーをクリックする操作のみ。ちなみに価格は無料だ。
ファイルを選択
画像データを開く
天地左右奥行幅などを調整
R部分も形状を選択できる
前後左右に回転し編集ができる
サイズの調整
まとめ 簡単な3Dデータ化は誰でもできる時代に
Thingiverseのような無料で3Dデータがダウンロードできるサイトの存在で扱える3Dデータは何万点、何十万点と存在している。しかしこうした無料データも自分で自由に編集できてデザインできなければ意味がない。
こうした無料データの存在も、簡単な3Dソフトウェアが登場すれば大いに素材として価値を発揮するかもしれない。特に一般人が気軽に使えるためには、3Dプリンター自体の性能とともに、3Dソフトウェアの簡単さが重要になってくる。
eXtrudyはそうした面からも画像を簡単に3Dデータに変換することができるという画期的な機能を備えていると言っていいだろう。
例えば子供の書いた絵を3Dプリンターで出力し置物として提供するサービスや、ペットの写真などを3Dプリンターでプリントしフィギュアとして提供するサービスが登場しているが、eXtrudyのような誰でも扱える3Dソフトが普及し一般的な存在になれば、簡単な3Dデータ化はもはや人の手を借りることなく二次元プリンターのように個人でてきてしまうだろう。
またその一方で、正確な設計が要求されるモノづくりの分野や、従来から使用が盛んなプロダクトデザインの分野ではこれまで通りの高性能な3Dソフトウェアが担うようになってくる。
あくまでもeXtrudyのような無料3Dソフトは、製品開発の分野としてではなく、一般の人々向けのエンターテイメントソフトとして存在価値を発揮しすみわけができてくると思われる。
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