GEとMakerbotは家電製品の共創を行うメーカーコミュニティを強化

オープンソースの流れを組む本当の「共創」

ここ数年で、「共創」という言葉が盛んに使われるようになってきている。とりわけ商品開発の分野での使用が顕著だ。この共創とはどのようなことを指すのだろうか。

読んで字のごとく商品開発を共に創るという意味だが、新たな商品開発の手法として、企業が取り入れるケースが増えているという。

マクドナルドが新たな商品開発に一般消費者たちを集めて意見を取り入れたり、生命保険会社のメットライフアリコが企業広報動画にフリーのクリエイターから作品を募るといった使い方が報道されてるが、こうした使用方法はかなり狭義の意味の「共創」に過ぎない。

マクドナルドの場合は、従来のマーケティング手法である古典的な消費者アンケートの延長線上にすぎず、メットライフアリコの動画制作はクラウドソーシングに近いだろう。

このような極めて限定的な「共創」が報道されるなか、本格的な「共創」体制を作り上げている企業がアメリカには多々登場しつつある。中でもGEはクラウドから不特定多数のアイデアや意見を集約する「共創」製品開発の老舗だ。

家電製品のオンライン共創コミュニティFirstBuild

GEは過去に様々な企業と提携することで、自社製品の開発に利用してきた経緯がある。

過去には自社で製造するジェットエンジンブラケットの次世代モデルの製造開発に、多数のCADエンジニアが登録するサイト「GrabCAD」とコラボレーションしている。

このジェットエンジンブラケットでは全世界56ヵ国700近い作品が応募され、実際に遠く離れたインドネシアのエンジニアがデザインしたモデルが採用されている。

これは単純なクラウドソーシングではなく、不特定多数のアイデアを集約し、GEの研究開発スタッフとともに実用化に結び付ける取組と言っていい。

今回そんなGEが新たに進めるのが、本格的な「共創」ともいえる、家電製品のメーカーコミュニティ事業。

この事業は「FirstBuildオンライン共創コミュニティ」と呼ばれるもので、自動車関連のオンラインコミュニティローカル・モーターズと、3DプリンターメーカーMakerBotと共同で行うものだ。

このFirstBuildは今年の4月にアメリカのルイビル大学内に開発施設が設置され、その広さはなんと、35000平方フィート(約3251平方メートル)にも上る。

Firstbuildの記事はこちらをどうぞ

製品企画から試作開発、製造販売まで行う

このFirstbuildは今回のMakerbotとの提携で、新たなアイデアやデザインを募るプラットフォームとしての機能が期待されると発表しているが、詳細は不明だ。

しかしMakerbotは既にThingiverseなど多くのクリエイターが参加する3Dモデルサイトなどを運営しており、よりアイデアを増加させるルートとしての機能が期待されるかもしれない。

また、このFirstbuildの面白い点は、ヴァーチャルとリアルを自由に組み合わせて家電製品の開発ができる点だ。

デザインやアイデアなど、不特定多数のものから募った方が効果的な部分はヴァーチャルコミュニティを利用し、実際の試作開発や製造はFirstbuildの拠点を自由に使うことができる。

また、販売はオンライン上で行うという仕組みだ。既に、Firstbuildでは冷凍関連の家電製品や食器洗浄機、電子レンジなどのクッキング用品、洗濯機、乾燥機、浄水システムなどのプロジェクトを立ち上げる予定。

GEは過去にも自社で行ったエコマジネーションチャレンジというプロジェクトで、家電製品の特許や設計図をオンライン上に公開して、製品開発を行なったり、製品開発のオンラインコミュニティQuirkyなどと提携している。

Firstbuildで製品の試作に取り組む動画

既に多くの家電製品の試作が開始されている

GEのその他の共創プロジェクトはこちらをどうぞ

まとめ -共創で本当に売れる商品は作れるか?‐

3Dプリント技術の普及とともに、製品がデータからダイレクトに作れるようになるため、オープンソース化の波がモノづくりにまで押し寄せている。

クラウドで製品データ、デザインデータを共有し、3Dプリンターで試作、データ状で改良、という流れを繰り返すことで、商品開発のスピードを飛躍的に高めるということから、この流れはさらに普及するだろう。

さらには、3Dプリンターでの生産体制も可能になればよりコストを抑えスピーディに市場に商品を投下することが可能だ。確かに、製造と生産を効率化させ、コストを抑えることができる3Dプリント技術は素晴らしい。

しかしその一方で、本当に人に価値を与える製品や、世界を変える製品を作ることはできるのだろうかという疑問もわく。

例えば、「電話」や「パソコン」の概念を変え、世界的に一気に普及させたアップルのiPhoneはスティーブジョブズの力が大きい。

こう言ってはかなりの語弊を招くかもしれないが、スティーブジョブズの強烈な個性と、デザインに対する異常なこだわり、他者を排撃する攻撃性があって初めて、世界を変える程の製品ができたのだと思われる。

これは製品開発の内部、すなわち設計図や特許を公開しオープンに不特定多数の人間が改良できるという「共創」の製品開発とは真逆の考え方だ。

スティーブジョブズは、iPhoneの内部を誰にも開けさせないために、どのメーカーもほとんど使っていない特殊なネジまで製品設計に組み込み、内部の基盤の配列まで美しさにこだわったという。

また、デザイン以外のマーケティングの部分も他とは全く異なる発想を持つ。アップルの場合、広告、商品発表のプレゼンテーション、販売店、ホームページなど、エンドユーザーに触れるすべての部分は、ジョブズの感性が及んでいるが、クラウド上における、マーケティング方法は全く異なるようになるだろう。

徹底して人の持つ「印象」にこだわった商品と、不特定多数の人間のアイデアが反映された商品、どちらが人々に価値を与え、売れるものになるのだろうか。これからの新たなモノづくりの方向性は非常に興味深い。

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