炭素繊維の3DプリンターMarkForged Mark Oneとは

炭素繊維を含む複合3Dプリンター

現在3Dプリンターは素材の多角化が急ピッチで進んでいる。

プラスチックでもフルカラーの印刷技術が登場したり、ゴム状の柔軟素材と硬いプラスチック素材を組み合わせる複合印刷も登場している。そのほかチタン粉末やセラミックなど様々な用途での使用が確立され始めている。

最近では素材の研究イコール、3Dプリントの研究と、ほぼセットで研究開発が進められており、素材開発には3Dプリント技術は欠かすことができないようになっている。そんな中、現在使用されている最先端素材である炭素繊維を複合することができる3Dプリンターが発表された。

発表されたのはMarkForged社のMark Oneで、炭素繊維、ガラス繊維、ABS樹脂、ナイロンの4素材を複合してプリントすることができるとのこと。これによりアルミニウムよりも高い強度対重量比を有する部品、工具、器具が3Dプリントできるとされている。

ソリッドワークス2014のMark one 動画

炭素繊維の特長とは

炭素繊維は今では最先端素材として注目を集めている。その特長はどのような特徴があるのだろうか。

一言でいうと「軽くと強い」ということが言える。その比重は鉄の4分の1で、比強度で10倍、比弾性率で7倍を誇る。軽くて強くて弾性に富む性質を持っている。

これ以外にあ耐摩耗性や耐熱性、耐酸性といった耐久力に優れるだけではなく、電気伝導性が高い。

こうしたメリットが注目され、今では自動車や航空機、ロケットのパーツに始まり、土木建築素材、風力発電、ゴルフシャフト、テニスラケット、釣竿、剣道の竹刀など、幅広く使用されている。ちなみに炭素繊維の市場シェアは東レ社が圧倒的で、世界市場の20%を占めている。

一方で炭素繊維の短所としてあげられるのが製造コストの高さや、加工の難しさが指摘されている。

炭素繊維は素材として異方性(物理的性質が方向によって異なること)を持っていることから、どういった形で積層し形作るかという点がとても難しいという性質がある。

Mark Oneの性能は?

MarkForged社は Mark Oneが世界初の炭素繊維3Dプリンターになると発表しているが、実際の性能はどうなのであろうか。

上記で述べた通り炭素繊維は軽くて強いという特性の反面、物体を形成するのが難しいという性質がある。そのような性質をもつ炭素繊維を本当に3Dプリントすることで使用できるようになるのであろうか。

発売予定は2014年の末であるため、調整に相当時間がかかりそうだ。また1台あたりの価格が5000ドルと安いことから、業務用の高性能な3Dプリンターに比べてあくまでも安価な試作品製造を目的としたものになりそうだ。

Mark One動画

印刷された炭素繊維

Mark Oneスペック

  • 印刷技術:溶融フィラメント製造(FFF)/コンポジットフィラメント製造(CFF)
  • 積層サイズ:305mm× 160mm× 160mm
  • 互換性:炭素繊維、ガラス繊維、ナイロン、ABS樹脂
  • 解像度:FFF印刷:100ミクロン/ CFF印刷:200ミクロン
  • 押出機:デュアルクイックチェンジ
  • フィラメントサイズ:FFF:1.75ミリメートル、CFF:MF4
  • 一時停止/再開プリント:あり
  • シャーシ:アルマイトユニボディ
  • 対応OS:Mac OSの10.7Lion以上、Windows XP 以上、Linux
  • サポートブラウザ:クローム30 以上、Firefox10 以上、Safari6 以上
  • サポートファイル:STL、OBJ
  • 接続性:ワイヤレス、USB、SDカードcarbonfibe3

まとめ

Mark Oneは形状や価格帯から見てデスクトップタイプの3Dプリンターと考えられる。

3Dプリント技術が進歩しつつあるとはいえ、デスクトップタイプの3Dプリンターはまだまだ不具合が多く、デリケートな機械だ。温度や湿度、対象物の形状など微妙な条件でプリントが上手くいったり、失敗したりする。

例えばMakerBotのプリンターでもかなりの確率で印刷に失敗したり、樹脂が抽出されずにそのまま成形が止まらないという場合もある。

全体的な技術的底上げが必要な中、成形が難しいといわれる炭素繊維で本当にデスクトップタイプで3Dプリントできるのかどうかは疑問である。

少なくともMarkForged社の公開している動画では炭素繊維と思われる印刷はなされていない。今後の技術的進展と情報公開に期待したい。

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